神様の名前

 

 イスラエルの言葉は、ヘブライ語といいます。ヘブライ語は右から左に読みます。通常、子音ばかりで表わし、母音は表記されません。

 ヘブライ語聖書に、神様の名前が記されています。それは、英語のアルファベットにして「YHWH」という四文字で表わされています。母音の付け方で様々な読み方が出来ます。

 じつは、「十戒」と呼ばれる大切な神の教え・10の命令の中に「神様の名前をみだりに唱えてはいけません」という教えがあり、イスラエルの人々は、この4文字を神聖文字として正確に読みません。

 どのように読むかというと、「アドナイ」と読むのです。アドナイと聞くと、聖書に詳しい方ならば、創世記22章14節の「アドナイ・エレ」 を思い起こされることでしょう。アドナイとは、「私のご主人様」という意味です。

 「主人」という意味の単語の「アドーン」に「イ」という「私」を意味する接尾語がつくと、「私のご主人様」という言葉になります。神の固有名詞を正しく呼ぶ代わりに「アドナイ」を用いて、神様の名前をみだりに唱えることを避けているわけです。そのために、本来の読み方が忘れられ、分からなくなってしまいました。
 「YHWH」をどのように読むのか、ということで様々な研究が行われ、そこで出てきたのが「エホバ」という読み方です。YHWHにアドナイの母音をつけて読むというものです。16世紀の神学者たちが唱えて広く普及しました。有名な英国ジェームズ王欽定訳にはJehovah(ジェホヴァ)、日本の文語訳聖書にもエホバと記されています。

 けれども、20世紀になって考古学的な発見や研究が進んだ結果、これはヤーウェ、あるいはヤハウェと読まれていたということが分かりました。新共同訳聖書では、上記「アドナイ・エレ」を正しく、「ヤーウェ・イルエ」と記しています。
 神がモーセに、「わたしはある、というものだ(I am that I am)」と言われました(出エジプト記3章14節)。この、「わたしはある(I am)」のヘブライ語はハーヤーで、ヤーウェはこの言葉から派生して出来たものだという結論に達したのです。
 現代の日本語聖書は、神の名をみだりに唱えないという命令と伝統、またイエス・キリストの弟子たちが読んでいたギリシャ語に翻訳された旧約聖書(セプチュアジンタ)にはキュリオス(主人)という訳語が用いられていること、そして、新約聖書ではイエス・キリストを主(キュリオス)と呼んでいることから、YHWHはすべて「主」と訳されています。

 漢字の「主」という字は、燭台の上に立てられたろうそくが燃えている様子を表わした象形文字から出来たそうです。家の中を照らす明かりは家の中心に置かれました。そこから、中心という意味の主という文字が生まれたのです。そして、家の中心になる人を主(あるじ)、主人と言い、最も大事なものを主(おも)、主要と言うようになったわけです。文字の成り立ちを考えても、あらためて、神様を「主」と呼ぶというのは、なんと相応しいことだろうかと思います。神様が昔の中国の人に霊感を与えてそのような字を作らせなさったのかもしれませんね。

 

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